異文化が交ざる青い街:伊寧の伝統建築と名物飲料「クワス」
「砂漠」や「遺跡」といった定番のイメージを覆す、もう一つの中国シルクロードの素顔がある。
カザフスタンとの国境にほど近い、新疆イリ・カザフ自治州の首府、伊寧(イーニン)。ここは、見渡す限りの「青色」に染まったメルヘンチックな街並みと、ロシアや中央アジアの文化が色濃く混ざり合う、非常にユニークな場所だ。今回は、シルクロード旅行の中でも一際異彩を放つ伊寧の美しい伝統建築と、街角で愛される名物飲料「クワス」の魅力に迫る。

どこを切り取っても絵になる「青の迷宮」
伊寧の旧市街である「カザンチ民俗村」に足を踏み入れると、そこはまるで別世界だ。家の壁、精巧な彫刻が施された木製の扉、窓枠、さらには屋根のひさしに至るまで、街のありとあらゆるものが鮮やかな「スカイブルー」で統一されている。
乾燥した気候の中で、水や空を連想させる「青」は、現地の人々にとって生命と平和を象徴する神聖な色だ。太陽の光を浴びて輝く青い路地を歩いていると、まるで地中海の街や童話の世界に迷い込んだかのような錯覚に陥る。
街中には「ハルプ」と呼ばれる伝統的な馬車がカポッカポッと軽快な音を立てて走っており、このシルクロード都市ののんびりとした日常の風景をさらにロマンチックに演出している。
琥珀色の名物飲料「クワス」で喉を潤す
美しい青の迷宮を散策して喉が渇いたら、伊寧名物のドリンク「クワス」の出番だ。
クワスとは、もともとロシアや東欧から伝わった発酵飲料である。伊寧の街角やバザールでは、蜂蜜やホップ、麦芽などを独自に発酵させて手作りされた、新鮮な琥珀色のクワスが樽に入れられて売られている。
グラスに注がれた冷たい液体は、シュワッとした微炭酸。一口飲めば、蜂蜜の優しい甘さとホップのほのかな苦味、そしてフルーティーな香りが口いっぱいに広がる。アルコール度数はほとんどないため、夏の暑い日差しの中でゴクゴクと飲み干すのに最高の「オアシス飲料」である。
シルクロードが運んだ甘い「融合」
クワスと一緒にぜひ味わいたいのが、地元で大人気の手作りアイスクリームだ。濃厚なミルクの味わいがありながらも後味はさっぱりとしており、スパイシーな羊肉の串焼きなどを食べた後のデザートにぴったりだ。
ロシア由来のクワスやアイスクリームを、ウイグル族やカザフ族の人々が日常的に楽しんでいる風景。これこそが、新疆ウイグル自治区観光の最大の醍醐味である「文化の融合」である。異なる民族が交差する国境の街だからこそ、建築から食文化に至るまで、独自のミックスカルチャーが見事に花開いたのだ。
絵本のような世界へ飛び込もう
壮大な歴史的遺跡を巡る旅も素晴らしいが、伊寧のように「生きている異国情緒」を肌で直接感じられる場所は非常に珍しい。
しかし、その街へたどり着くまでの「プロセス」さえも、一つの物語に変えてしまえるとしたらどうだろうか。かつて隊商たちが命がけで渡ったシルクロードの荒野を、今はただ、窓辺に身を委ねるだけで駆け抜けていく。豪華列車「シルクロード・エクスプレス」が提供するのは、単なる移動ではない。刻一刻と移ろいゆく車窓の景色を、まるで一枚の動く絵画のように堪能する、贅沢な特等席である。
スマートフォンのカメラをどこに向けても「映える」伊寧の真っ青な街並み、そこで暮らす人々の飾らない笑顔、そして冷たくて甘いクワスの味わい。列車を降りた先には、そんな宝物のような瞬間が待っている。
次の長期休みには、定番のルートを離れ、「シルクロード・エクスプレス」という名のタイムマシンに揺られてみてはいかがだろうか。豪華な寝台で目覚めるたびに、見知らぬ土地の色彩が広がる。シルクロードの新しい顔に出会うための、日常を完全に忘れる旅が、ここから始まる。