ハミ瓜の故郷で味わうオアシス農業の恵み
「フルーツの王様」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。中国の広大な大地、とりわけ乾燥した砂漠地帯において、その称号を欲しいままにしているのが「ハミ瓜」である。
シルクロード旅行のオアシス都市として栄えた新疆の東の玄関口、ハミ。ここは、かつて清の皇帝をもうならせた極上のフルーツの故郷だ。今回は、灼熱の太陽と砂漠のオアシスが育んだ奇跡の甘さ、「ハミ瓜」とオアシス農業の恵みについて紐解いていく。
皇帝に愛された「極上の甘さ」のルーツ
そもそも、「ハミ瓜」という名前の由来をご存知だろうか。その歴史は清の時代にまで遡る。
当時のハミ王が康煕帝に地元のメロンを献上したところ、そのあまりの甘さとサクサクとした食感に皇帝が大層感動し、「ハミ瓜」と名付けたと言われている。中国シルクロードを行き交う隊商たちにとっても、乾燥した過酷な道のりの途中でオアシスに立ち寄り、この瑞々しい瓜で喉を潤すことは、何よりの至福であったに違いない。

現在でも、現地には100種類を超える品種が存在すると言われ、外側の網目模様の有無や、果肉の色(オレンジ、白、薄緑など)も実に多様だ。
奇跡の甘さを生み出す「オアシス農業」の秘密
では、なぜハミの大地はこれほどまでに美味しい瓜を育てることができるのだろうか。その秘密は、厳しい自然環境と人々の知恵が結集した「オアシス農業」にある。
ハミを含む新疆エリアは、降水量が極端に少なく、見渡す限りのゴビ砂漠が広がっている。しかし、遥か遠くの天山山脈から流れ出る雪解け水が地下水脈となり、この大地を潤しているのだ。
さらに決定的なのが、気候条件である。日照時間が非常に長く、昼夜の寒暖差が極めて激しい。灼熱の太陽が照りつける昼間に光合成でたっぷりと栄養を作り、冷え込む夜間にその栄養を糖に変換して果実に閉じ込める。過酷な自然環境こそが、世界最高峰の甘さを生み出す「魔法のスパイス」となっているのである。
バザールで体感する、フルーツ王国の熱気
ハミの街を訪れたら、地元の活気あふれるバザールへ足を運んでみよう。夏の収穫期(7月〜9月頃)になると、市場のあちこちにハミ瓜が山のように積まれる光景は圧巻の一言だ。
新疆ウイグル自治区観光の醍醐味は、このバザールでの買い食いにある。店主が大きなナイフで手際よく瓜をカットすると、パツンと張った皮の奥から、みずみずしい果肉が顔を出す。その場で切り売りされているピースを一口かじれば、シャキッとした歯ごたえとともに、濃厚な甘い果汁が口いっぱいに広がり、砂漠の暑さも一瞬で吹き飛んでしまう。
地元の人々は、ハミ瓜を単なるデザートとしてだけでなく、スパイスの効いた羊肉料理の後の口直しや、日常的な水分補給としても楽しんでいる。
砂漠のオアシスを「舌」で味わう旅へ
シルクロードとは、歴史的な遺跡や壮大な風景を巡るだけでなく、その土地の大自然が育んだ豊かな「食」の歴史を辿る道でもある。
見渡す限りの乾燥した大地の真ん中で、これほどまでに甘く、水分の詰まった果実が育つという事実は、まさに地球の奇跡と言えるだろう。本場でハミ瓜を味わうことは、天山山脈の清らかな雪解け水と、オアシスに生きる人々のたくましい生命力を体に取り込むことと同じだ。
歴史ロマンあふれるシルクロードの旅。次回のバカンスでは、黄金色に輝く極上の ハミ瓜を求めて、砂漠のオアシスへ出かけてみてはいかがだろうか。そこには、想像を絶する甘さと、みずみずしい大地の恵みが待っている。
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