2025.12.19

​カシュガル:シルクロードの西の玄関

千年の交差点が紡ぐ文化のモザイク

カシュガルは、新疆ウイグル自治区の西南に位置するオアシス都市であり、シルクロードにおいて「西の玄関」として、二千年にわたり東西文明の交流を担ってきました。パミール高原とタクラマカン砂漠に挟まれたこの地は、かつて唐代の玄奘三蔵が『大唐西域記』で「疏勒」として記録し、張騫や班超の足跡も残る歴史の十字路です。今日でも、その名が示す「宝玉石が集う地」のごとく、多様な文化が輝きを放ちます。

歴史の重層性:文明が交差するハブ

カシュガルは、シルクロードの南北ルートが合流する要衝として、商人や探検家、僧侶たちの中継点となりました。唐代には安西四鎮の一つとして軍事・経済の要となり、14世紀にはマルコ・ポロがこの地を「商業の中心」と記しています。19世紀以降は、中央アジアと中国を結ぶ国際市場としてさらに発展しました。旧市街のエティガル・モスクを中心に放射状に延びる路地には、かつての隊商の活気が息づきます。現在も、日々開かれるバザールでは、ウイグル族の職人が作る銅器や絨毯が並び、歴史の積層を感じさせます。

文化のるつぼ:多民族が織りなす生活風景

カシュガルは、ウイグル族を主軸に、漢族、タジク族、回族など多様な民族が共存します。街中では、イスラム様式のモスクと仏教寺院が並び、ウイグル語と中国語が交錯します。特に日曜日の「日曜バザール」は、その縮図です。タジキスタンやパキスタンから輸入されたスパイス、アフガンの手工芸品、地元の果実が所狭しと並び、訪れる人を圧倒します。また、タジク族の鷹匠の文化や、ウイグルの十二ムカムといった無形文化遺産も、カシュガルならではの魅力です。

自然と調和した街の景観

カシュガルの周辺には、パミール高原の雄大な山並みが広がります。南には「冰山の父」と呼ばれる慕士塔格山、そのふもとには宝石のような青い湖・卡拉庫力湖が輝きます。一方、街の東にはタクラマカン砂漠が迫り、砂漠と雪山が共存する稀有な景観を形成します。カシュガル旧市街は、日干しレンガの家々が迷路のように連なり、路地にはブドウ棚が設けられています。これらは、灼熱の砂漠気候に対応した伝統的建築知恵の表れです。

現代のカシュガル:過去と未来の融合

近年、カシュガルは「シルクロード経済帯」の結節点として再び注目を集めます。中央アジア・西アジア国際貿易市場では、隣国からの商品が溢れ、デジタル決済が普及する一方で、ロバ車が行き交う光景も日常的です。このように、カシュガルは伝統を残しつつ、近代化の波を受ける「生きる遺産」として進化を続けています。

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星享鐵旅の Silk Road Express が導く、カシュガル文化体験

カシュガルの文化は、通過するだけではなく、実際に体験することでその魅力がより立体的に立ち上がります。

**星享鐵旅(Glamour Trains)旗下の Silk Road Express(絲路夢想號)**では、シルクロードの旅路の一部として喀什に立ち寄り、街の歴史や日常文化に深く触れる時間が丁寧に組み込まれています。旧市街の高台に広がる伝統的な民居では、現地文化を熟知した“バケーション・アンバサダー”の案内のもと、印花や土陶といった非物質文化遺産の手仕事を体験します。茶を囲む穏やかなひとときとともに、実用性と美意識を兼ね備えた工芸文化が、自然なかたちで紹介されます。

また、二千年以上の歴史を重ねてきたカシュガル古城を歩きながら、シルクロード都市としての記憶や、多民族が紡いできた生活の痕跡を肌で感じることができます。

さらに旅程の中では、新疆文化を象徴するムカム音楽を取り入れた特別な食事の時間も設けられ、郷土料理とともに、歌・舞・演奏が一体となった伝統芸能を間近で楽しむことができます。

Silk Road Express は、移動の快適さを保ちながら、喀什という「生きた文化空間」を旅の流れの中で自然に体験できる列車旅を提供しています。

旅の提案:カシュガルを体験する3つの方法

1、歴史探検: エティガル・モスクと、その隣接する旧市街路地を散策します。職人たちの工房を訪れ、伝統技術を間近で見学します。

2、自然体験: パミール高原への日帰り旅行します。慕士塔格山を望む卡拉庫力湖では、遊牧民のヤルトに宿泊できます。

3、市場めぐり: 日曜バザールで買い物を楽しむ際、ザクロの果汁やナンの焼き立てを味わいつつ、値切り交渉にも挑戦してみましょう。

カシュガルは、単なる過去の遺産ではなく、現在も息づく「文明の交差点」です。その路地を歩けば、商人たちの活気や異文化が交差する歴史の鼓動が聞こえてきます。シルクロードの精神を体感できるこの街は、旅人に「世界の広さ」を静かに語りかけるでしょう。