2026.05.14

直径50センチの巨大パン!?クチャ名物「大ナン」と王府の歴史

旅行先での楽しみといえば、その土地ならではの「ご当地グルメ」と「歴史建築」の探求である。中国シルクロードのルート上には数え切れないほどのオアシス都市が存在するが、その中でも視覚と味覚の両方で旅行者を圧倒する街がある。

それが、タクラマカン砂漠の北縁に位置する歴史都市、クチャである。

かつて亀茲(きじ)国として栄え、東西文化の交差点であったこの街には、思わず二度見してしまうほどの「巨大なパン」と、オアシス王国の栄華を今に伝える宮殿が存在する。今回は、シルクロード旅行のディープな魅力を味わえるクチャの食と歴史について紹介しよう。

車のハンドルより 大きい!? クチャ名物「大ナン」

新疆エリアを旅していると、街の至る所で「ナン」と呼ばれる円盤状のパンを目にする。ウイグル族の人々にとって、ナンは毎日の食卓に絶対に欠かせない主食である。

しかし、クチャのナンは他の都市のものとはスケールが全く違う。なんと、直径が50センチにも達する「庫車大ナン」が名物なのだ。

街のナン屋の店先には、まるで車のハンドルか、あるいはキャプテン・アメリカの盾かと思うような巨大なナンが山のように積まれている。特製の巨大なタヌールの内壁に生地を勢いよく貼り付けて焼き上げる職人の姿は、それ自体が新疆ウイグル自治区観光の立派なエンターテインメントだ。

これほどまでに巨大化するのには理由がある。シルクロードとは、過酷な砂漠と果てしない乾燥地帯を越える道である。水分が少なく、長期間の保存が効くナンは、かつてキャラバンたちが旅の食料として持ち歩くのに最適な「古代の保存食」だったのだ。顔より大きなナンを一枚買えば、パリッとした香ばしい外側と、噛むほどに小麦の甘みが広がるモチモチの内側の両方を楽しむことができる。
焼きたてで香ばしい胡麻が散りばめられた、伝統的なナン(平焼きパン)。背景にはクチャの街角の窯と、パンを作る職人の姿が映る

かつての栄華を伝える「クチャ王府」

巨大なナンでお腹を満たしたら、次はこの街の歴史的な深みに触れてみよう。クチャの旧市街の中心部に堂々とそびえ立つのが「クチャ王府」である。

ここは、清の時代に時の皇帝・乾隆帝が、現地の反乱平定に貢献したウイグル族の指導者に「クチャ王」の称号を与え、その住居として建設された宮殿だ。現在の建物は2004年に再建されたものだが、その建築様式には、このシルクロード都市ならではのユニークな特徴が見事に表れている。

王府の敷地内に足を踏み入れると、漢族の伝統的な建築様式である「四合院(中庭を囲む四角い建物)」と、イスラム建築特有の幾何学模様やアーチ型の窓、そして色鮮やかな緑のタイルが見事に融合しているのがわかる。中央からの統治と、地元のイスラム文化がどうやって共存してきたのか。建物のデザインそのものが、多文化が交差するシルクロードの歴史を無言のうちに語りかけてくる。

王族の暮らしとオアシスの歴史ロマン

クチャ王府の中には、歴代のクチャ王に関する資料を展示した博物館や、かつての王族が生活していた豪華な部屋が再現されているエリアがある。

展示品を見ていると、彼らが単なる辺境の支配者ではなく、中央アジアや中東、そして中国の王朝との間で巧みにバランスを取りながら、このオアシス都市の繁栄を守り抜いてきたことが理解できる。乾燥した大地の中で、豊かな雪解け水を利用して農業を発展させ、交易の拠点として富を築き上げた歴史のロマンがここには詰まっている。

王府の静かな中庭を歩きながら、数百年前の王族たちも、今の私たちと同じようにあの香ばしい「大ナン」をかじり、この同じ空を見上げていたのかもしれないと想像するのは、非常に楽しい時間である。

胃袋と心で感じるシルクロードの旅

直径50センチの巨大なナンと、異文化が見事に融合した王府の建築。

クチャという街は、歴史の教科書に書かれた「東西交流」という言葉を、ただの知識としてではなく、具体的な「形」と「味」として旅行者に突きつけてくる。シルクロード観光のルートを決める際、もし時間に余裕があるのなら、ぜひこのクチャの街へ立ち寄ってみてほしい。

街角に漂う焼きたての小麦の香りと、華麗な宮殿の静寂。その圧倒的なコントラストは、日常のスケールを軽く飛び越え、大陸の広大さと悠久の歴史をあなたの五感に直接刻み込んでくれるはずだ。

このシルクロードの旅を、単なる「移動の連続」ではなく、真に豊かな「文化への没入」に変えたいと願うなら、ぜひ私たちの「シルクロード・エクスプレス」での旅をご検討ください。

かつてのキャラバンたちが何日もかけて砂漠を越えた過酷な道のりも、この列車なら、揺らぎのない寛ぎの時間へと変わります。果てしなく続く乾燥地帯を横断する際の疲労から解放され、最適なコンディションでクチャの街へ。車内では、訪れる土地の歴史背景を紐解くお手伝いもしており、車窓から見える風景が、ただの景色ではなく「生きた歴史」として深く心に刻まれるはずです。

日常の喧騒を離れ、悠久の歴史ロマンに心ゆくまで浸る。そんな、心身ともに満たされるシルクロードの旅を、私たちと共に始めてみませんか?